音楽の話 #ムーン・リバー

音楽の話 #ムーン・リバー

ムーン・リバー (1960) オードリー・ヘプバーン

 あなたにとっての”永遠のプリンセス”は誰でしょう。世のご主人方はもちろん最愛の奥様の名前を一番に挙げられることでしょうが…世界にはたくさんのプリンセスがいます。イギリス王室をはじめヨーロッパ・中東・アジアなど各国の王女たち(セレブ感たっぷりだけど、とにかく美女揃いね!びっくりしちゃう…)、またディズニーや童話・絵本のお姫様たち(白雪姫にシンデレラ、オーロラ姫、アリエルにベル、ジャスミン、ポカホンタス、ムーラン、ティアナ、ラプンツェル、メリダ、モアナ、エルサとアナ、そしてジゼル、アリス、ティンカー・ベル、ヴァネロペ、他にもキーダ姫、エロウィー姫、マリアン姫、メガラ、ナラ、フィオナ姫、アッタ姫にドット姫…みんな大好きすぎて選べません!強いて選ぶなら、やはりナウシカともののけの姫サンを推します)。皇后となられた雅子様などは平成を生きた日本人の心には今尚プリンセス像として鮮明にイメージされるのではないでしょうか。

romeo


 さて、そんな世にあふれる数多くのプリンセスの中でマスターの心を掴んで離さないのは、1953年公開のアメリカ映画『ローマの休日』のアン王女。お城を抜け出した王女と新聞記者の実らぬ恋の物語で、当時 無名だったオードリー・ヘプバーンを抜擢し、その溢れる魅力と才能に世界の観衆が虜になりました。若々しくユーモアもありお茶目、それでいて気品に満ちた王女アン役はオードリーの代名詞となり、ニューヨーク・タイムズでは”スリムで妖精のようで、物思いに沈んだ美しさを持ち、反面堂々としていて、新しく見つけた単純な喜びや愛情に心から感動する無邪気さも兼ね備えている。恋の終わりに勇敢にも謝意を表した笑顔を見せるが、彼女の厳格な将来に立ち向かって気の毒なくらい寂しそうな姿が目に残る”と評されたのでした。

Juliet

 ローマの休日をきっかけにオードリーはスター女優となり、『麗しのサブリナ』『尼僧物語』『シャレード』『マイ・フェア・レディ』『暗くなるまで待って』などの映画をヒットさせアカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞、また舞台作品ではブロードウェイで『オンディーヌ』に出演しトニー賞を受賞しています。30代後半には女優業に区切りをつけ家族との暮らしを最優先にし、50代後半からは予てから望んでいたユニセフ親善大使として活動しました。人道支援が必要なアフリカ、南米、アジアの諸国を積極的に訪れ、飢餓に苦しむ子供たちを抱きしめ、食糧支援や予防接種の普及、水道設備の設置に尽力したのです。彼女は発展途上国を「第三世界」と呼ぶことを嫌いました。我々はともに一つの世界に暮らしている――人道上、非常な苦難に直面している多くの人々がいるのだということを世界中が認識してほしいと願いました。癌に蝕まれ家族や友人に囲まれながらその息を引き取る時まで気品に満ち気高く、そして全身から愛に溢れた彼女を、誰もが心の一番あたたかい場所にしまったことでしょう。

Romeo&Juliet


 今回紹介致します歌は、オードリーが長男を出産した31歳の時に主演した映画『ティファニーで朝食を』からムーン・リバーを。小中学校の音楽の教科書にも載っていたりするので、耳にも馴染んでいると思います。この映画の主人公ホリー・ゴライトリーは、清純派のオードリーが初めて演じた娼婦の役でした。都会の片隅で気ままに暮らすホリーが、遠い故郷を想いギターを弾きながら窓辺で歌う。オードリーの優しい歌声がとても印象的で、映画とともにムーン・リバーも大人気となりました。しかし、プロフェッショナルなシンガーではないから…と彼女自身がオードリー版の発売は認めず、インストゥルメンタル版やジェリー・バトラーやアンディ・ウィリアムスなどのカバー版がメジャーです。作曲者のヘンリー・マンシーニは、”ムーン・リバーはオードリーのために書かれたのです。彼女以上にこの曲を完璧に理解した人はいませんでした。ムーン・リバーには数えきれないほどのヴァージョンがありますが、オードリーのこれこそが文句なく最高のムーン・リバーと言えましょう”と、著書に書き記しています。オードリー版が発売(収録)されたのは彼女の追悼アルバムにて、映画公開から実に33年の時を経た1993年のことでした。それだけ多くのファンが待ち焦がれていたのでしょうね。

スクリーンの中の彼女は決して色褪せることなく、僕たちの心で生き続ける。
女性達の永遠の憧れ、オードリー・ヘプバーンは今日もまた輝くのです。

 

NO MUSIC, NO LIFE.

美味しいコーヒーと一緒に、音楽を楽しみましょう